建設常任委員会視察
8/4~8/6の3日間、建設常任委員会の視察を行いました(公費)。
今回は政策テーマを
①公共交通の結節機能とまちづくり
②ウォーターPPP
に設定し、①広島市のJR広島駅南口広場再整備と路面電車の乗り入れについて、②-1大阪市の工業用水道特定運営事業について、②-2浜松市の下水道コンセッション方式導入についてお話を伺って参りました。
まず、①は今後予定されるJR宇都宮駅西口の再開発とLRTの西口延伸を見据えたテーマとなっています。②のウォーターPPPとは何ぞや?というお話ですが、端的に申し上げると自治体が行う上下水道事業を一部(又は全部)民間にお任せすることを総称してウォーターPPPと呼んでいます。何でそんなものを導入するの?とのお声はごもっとも、私たちの生活に欠かせない上下水道事業は原則、皆さんの料金収入で賄う独立した会計で事業を行っているわけですが、人口減少による売上減少や今後更新需要が高まる老朽化した水道管・水道施設にかかるコスト増加、毎年発生する各種災害への対応、技術を持った職員さんの減少など自治体独自の運営では立ち行かなくなるだろうと言われているからです。実際はもう、大なり小なり既にウォーターPPPを導入している自治体もあり、本市も水道料金の値上げに向けた議論や、スモールスタートで一部PPPを導入する計画を進めています。
まだまだ不安も課題も多い分野ですから、議員の見識を深めるべく視察を行った次第です。
①広島市:JR広島駅南口広場再整備と路面電車の乗り入れについて
広島駅周辺と紙屋町・八丁堀地区の2つの都心核を繋ぐ路面電車のルート短縮を図った「駅前大橋ルート」は広島駅改札を出て直ぐビル構内に4つの路面電車乗降場を整備し、次々入ってくる電車を効率よく分散させている。お話にもあったが、路面電車が広島駅に吸い込まれていくような印象的な外観であった。
今後は周辺ビルを繋ぐ歩行者デッキ、賑わい広場、バス・タクシー・マイカーエリアの整備も進められるとのことで県都の玄関口にふさわしい一体的な整備と乗り換え利便性が着実に向上している。事業費は2度の増額を経て国が250億、市が250億、広島電鉄が20億の計520億円(ちなみに広島電鉄は独立採算制)。本市と同様に駅へのマイカー滞留が課題となっており、本市も過度な流入を防ぐ取り組みが裏目に出ないような乗降スペースとのバランスは要検討ではないかと考える。また本市の西側延伸を進める上では広島市の区分地上権活用や今後検討としている駅周辺施設の一括管理に向けた条例作成についても注視されたい。
②-1大阪市:工業用水道特定運営事業
大阪市水道局は給水収益の減少と更新需要の増大という課題に対応するため、工業用水道事業全般に運営権を設定し2022年4月、4社で構成する「みおつくし工業用水コンセッション(株)」へ原則10年間の運営を開始した。割引プランや初期費用の軽減支援でユーザー維持獲得による収益性の向上、最新含む各種技術を併用し管路を長持ち使いすることで投資抑制(費用削減)、運営権者のセルフモニタリング、市、有識者からのモニタリングを行うことで業務品質を確保している。この3方向のモニタリングは本市も民間参入を行う際に内容を精査すべき点である。ただ大阪市はもともとの内部留保や工業用に係る職員数を絞っていたため、(工業用については)導入が比較的容易だったのではないかと推察する。上水道に係る管路のコンセッションについても議論がなされたようだが、事業者へのリスクが大きい(採算が取れない)ことから導入を見送っており、本市も現行と各種PPP導入のコスト対比(VFM)・採算性への検証は慎重に行う必要がある。
今回の建設常任委員会メンバー。大阪市議会の議場にて
②-2浜松市:下水道コンセッション方式
平成17年、12市町村合併による静岡県からの西遠流域下水事業移管を発端とし、行財政改革による職員減少(現在、下水道の職員は驚きの24名とのこと)、施設更新需要や維持管理費の増加、人口減による収入の減少に対応するため浜松ウォーターシンフォニー(株)の部分型コンセッションを導入した。お話伺っていると大阪市とは事情が異なり、財政状況や圧倒的な職員不足からもコンセッション導入しなければ事業が持たない切迫感を感じた。自社修繕・繁忙期を外した工事発注によるコスト縮減・地元業者への発注・雇用への効果も見られ(結果的に)運営権対価が25億円と高額なことから分かるように大手企業の強みを生かした事業運営を行っている印象である。要求水準の他に民間の自由な提案を受け入れた点、持ちうる情報を最大限オープンにした情報提供と応募者からの要望に応じ追加対話等を重ねた点、運営権対価を0円以上とした点(運営権対価にも20%配点)などは複数の事業者が参加しやすく、競争原理を働かせた有効な取り組みである。特に応募者への情報提供や追加対話・質問回答等は細かく煮詰めないと選定や移行の際に齟齬が発生する可能性があり、本市も今後、内容整理を慎重に行う必要があると考える(浜松市の資料では質問回答が429項にも及んでいることが確認出来た)。
浜松市マスコットキャラクター、「出世法師直虎ちゃん」と“はままつ福市長”の肩書きを持つ「出世大名家康くん」
広島市視察を行った日は原爆投下の慰霊祭を前日に控えた5日でした。原爆投下から3日後には路面電車が復旧・運行していたとのお話も伺いながら、駅前大橋ルートが開通したばかりの多くの方々で賑わう広島駅を見て…平和への尊さも実感した視察となりました。
広島・大阪・浜松市の職員の皆さま、視察を受け入れて頂きまことにありがとうございました。今後の宇都宮市の取り組みに生かして参ります。
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