会派視察ご報告

 今回はうつのみや維新メンバーと共に、中核市で初めて児童相談所を設置した金沢市、新しい子どもの居場所を提供する長野市の教育支援センター、SaSaLANDの取り組みを視察して参りました(政務活動費を使用)。

 1.金沢市児童相談所について

 【視察の目的】

 児童相談所の設置にあたっては児童福祉法で都道府県と政令指定都市に義務付けられており、平成16年の法改正で中核市、28年の改正で特別区でも設置が可能となった。現在、児相を設置している中核市は5つ(兵庫県明石市、石川県金沢市、神奈川県横須賀市、奈良県奈良市、大阪府豊中市)あり、同じ北関東では群馬県高崎市が今年10月の開所を予定している。本市も独自の児童相談所設置に向けた検討を加速する中、下記の観点からお話を伺うべく視察を行った。

① 設置にいち早く名乗りを挙げた金沢市の背景

② 石川県から金沢市へ移行する際の取り組み

③ 人材の育成・確保策

④ 「教育と福祉」が複合した児相運営

 【内容及び所感】

・金沢市は平成15年に教育・保育全般の相談部門、幼児相談室、適応指導教室などを統合した「相談センター」を開設。平成18年に中核市として初めて児童相談所を設置し、多様化する相談ニーズに対応するための「こども総合相談センター(児童相談所)」を開所した。平成21年には児童相談所に一時保護所を開設し、福祉と教育が一体となった「教育プラザ富樫」として支援を行っている。

・教育プラザ内は福祉と教育部門が同じ場所、同じフロアで顔の見えるメリットを生かし児童虐待等への迅速な対応・乳幼児から児童生徒までの一貫した相談支援・連携体制を構築している。特に小学校入学時の引継ぎでは幼児期の状況を学校へいち早く情報共有できる連携体制を構築している。

・金沢児相の特徴として、全国初の中核市児相(H18)・ヤングケアラー相談窓口設置(R2)・要保護児童対策地域協議会機能(R6)を有している。なぜ容易ではない業務を抱えてまで設置をしたのか、その背景には少子化対策と児童福祉施策で出来ることを可能な限り実現していた中、唯一の課題が児童相談所の設置であり地方分権の観点からも当時の市長が設置を積極的に推進した背景がある。また石川県、金沢市の風土・市民性・役所内の職員構造が子ども支援環境に大きく影響し、「善隣館」という歴史ある地域福祉の拠点施設が存在したことから社会養護の関心が高いことが挙げられる(善隣思想)。

・児相の体制強化を目的に、今年度はこども家庭センター統括支援員や児相統括指導員を増員した。また人材確保・育成は継続的な課題であり、社会福祉士有資格者を行政職として継続的に採用、職員も通常業務の傍ら資格を取得している方もいらっしゃった。県からの業務移管に当たっては、引継ぎも兼ね職員を派遣し、設置3年目からは業務を自前で行った。現在は単独の児相設置を控える自治体職員を積極的に受け入れている。

・児相施設内は木材を基調とした木のぬくもりが感じられ、定員は12名。夜は3名の職員が常駐し24時間虐待相談対応を行っている。中庭を通じて指導員が座っていても施設内が見渡せるような口の字の造り・レイアウトとなっている。相談室や静養室(隔離部屋)、学習教室、体育館、多種の衣類や布団をストックする倉庫、床暖房付きのプレイルーム、直営の調理室(5名の調理員で3食作る)がある。

・元教員が学習指導を行い、午前中に2コマの授業がある。1人1台端末が配備されているのでリモート学習も出来るようになっている。

・福祉と教育の連携において課題を伺ったところ、当初は教育委員会と保健福祉分野の関係構築が容易ではなかった旨のお話があった。各学校1校に児童福祉司2名を配置、学校にも頻繁に伺い、顔の見える関係を構築していったとのこと。

強いて言うならば財政面の懸念が挙げられるがそれでも中核市が児相を持つデメリットは全くない、とキッパリ断言。


2.長野市教育支援センター「SaSaLAND」について

 【視察の目的】

 不登校への対策や支援はどの自治体も取り組みを行っているが、未だ根本的な解決には至っておらず、子どもたちの悩みも複合化されている。教育機会確保法では、子どもの権利条約と併せ学校への登校のみを目標とせず、子どもたちの主体的な行動を尊重し社会的自立を促す新たな考え方と多様な学びの場を認め、既存の学校についても新たな姿を構築するよう政策転換を促している。神奈川県川崎市「夢パーク」ではいち早く子どもが自由で主体的に取り組める環境を整備しており、此度の長野市「SaSaLAND」も夢パークの取り組みに倣った旨聞き及んでいたことから下記観点からのお話を伺うべく視察を行った。

① 施設概要と設置へ至った背景

② 児童生徒の様子・変化

③ 学校現場の変化

 【内容及び所感】

・SaSaLANDのコンセプト 「子どもたちが安心を実感できる居場所」

① 子どもたちの社会的自立に向けた支援(どんな子でも自分らしく、自分のペースで、自分を受け入れてもらえる場所)

② 保護者への支援(保護者の気持ちが和らぎ、保護者同士が繋がれる場所)

③ 教職員等の不登校に係わる研修(大人が理解を深められる場所)

・SaSaLAND施設概要

 長野市では既に市内支所や学校の敷地内に教育支援センターを8か所整備しており、令和6年度に開設したSaSaLANDは9か所目となる(小学校跡地を再利用)。

開所時間:平日の9時~15時、メタバースは火・木・金の午前中2時間

      ※市内小中学校が長期休業中でも利用可能

 利用料:無料(給食費や活動で発生した材料費は負担)

 交通手段:保護者送迎、路線バス、無料送迎バス(長野駅、川中島駅から各2便)

 ※施設で過ごすと出席となる。学校、他の教育支援センター、フリースクール等との併用も可

・既存の学校色を排除するため、時間割や特定の教室・机は無く、チャイムも鳴らさない。勉強を押し付けることはせず、「もし良かったら…○○しようよ」のスタンスで接している。ゴロゴロできるスペース、ゲームが出来るスペース、中庭では野菜を育てるなど子どもたちが気軽で自由に過ごすことが出来、木のぬくもりが感じられる施設となっている。

・利用者は年々増加し、現在の登録人数は204名、1日の平均利用人数は35.5名となっている(登録のみが3~4割程度とのこと)。

・普段は段ボール工作、読書、ボードゲーム、バスケ、剣道など思い思いに過ごし、子どもたちの意見を聞きながら野菜を育てたり歩道を作るなど、子どものやってみたい!をサポートする体制。また信州大学の学生(SaSaフレンド)や地域の方々と関わりながら各種イベントを開催している。

・ものづくりゲームの教育版マインクラフトを活用し、メタバースによる交流支援を行うことで生活リズムの改善や他者との関わりを構築している(1日平均9.2名が利用し、内1~2名は自宅から参加)。

・保護者支援としてはスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーが月2回施設を訪問し、児童生徒のみならず保護者にも面談を促している。また、親の会を実施し、保護者同士の交流や進路などの情報提供を行うほか、来所した児童生徒に給食を提供(1食あたり323円)することでお弁当を作らなくても良いよう保護者負担にも配慮している。

・給食を配送する教育支援センターはSaSaLANDのみ(他8か所はお弁当)であるが、給食とお弁当の割合は半々であった。時間制約の無いことが理由か分からないが、SaSaLANDでの給食残飯はあまり発生しない点は興味深い。

・市内に8か所の教育支援センターがあれば、SaSaLANDとの統合や廃止なども考えられたのではとの問いに対し、既存の支援センターは間借りなどもあり狭くて暗くて使い勝手が悪いが「これが良い」という子も居りどのようなニーズにも対応できるようSaSaLANDとすみ分けるために残したと伺う。児童生徒を誰一人として取り残さない姿勢が垣間見えた。

・信州大学の学生(SaSaフレンド)は今年度140名の登録があり、子どもたちと一緒に遊んだり、勉強を教えるなどしている。原則ボランティアだが教育学部の必修科目となっている事や、謝礼とまではいかないが駅-施設間の送迎バスに乗れる、栄養ある給食を食べられるなどWiN-WiNの関係性を構築している。また、SaSaLANDの設置にあたっても当時教育委員であった信州大学教授(心理学の先生)が後押しをしてくれたことも大きいと伺う。地元大学との密な連携が図られている点が特徴的である。

・メタバースで交流していた子がPC越しに聞こえるSaSaLANDの生活音に興味を持ち、川遊びのイベントに来てくれるなどのエピソードもあり、ひきこもり支援にも寄与していることが伺えた。

・SaSaLANDでの生活は出席扱いとなることから、周囲の人間の非難よりも逆に当事者が「本当に出席扱いで良いのか」という葛藤を抱えることがあるという。しかし、あくまでも「子どもの主体的な取り組み」を促す場であるため、大原則は維持しつつも今後成果は検証し、既存の小中学校に対してもSaSaLANDのエキスを落とし込む必要性について熱く説いていた。この点は宇都宮市にも必要であり、大きく共感する課題である。


【視察から見る本市への活かし方】

〇金沢市

宇都宮市も単独の児相設置に向け複合機関や立地、人材確保等の検討を加速しているが、こども家庭センターと青少年自立センターの複合機能に重きを置いており、教育との連携が薄い印象である。今後金沢市の取り組みを参考にして教育との連携に漏れがないよう働きかけて参るとともに施設についてはエアコン付体育館やストック用倉庫、(可能であれば)県産木材の使用など時勢に合わせた施設の在り方とし、県との業務移管は年単位の期間でスーパーバイザーを設置、職員の相互派遣、引継ぎ体制の充実、職員の資格取得に向けた後押しも必要と考える。いずれにせよ、子どもたちが安心して保護される環境整備や虐待未然防止の相談体制に努める必要がある。


〇長野市

やはり学校とは違う、子どもたちがありのままの姿でいられる居場所の構築は必要である。1からその構築を考えると児相のように予算や立地的な問題も浮かぶが、宇都宮市では子どもの屋内遊び場を整備する計画を立てており、この施設にSaSaLANDのコンセプトにもある「子どもが安心を実感できる」創意工夫を盛り込んでいくのも良いのではないかと感じた。また長野市の職員さんは今後、学校内にもSaSaLANDのようにゴロゴロ出来る場を作りたい、SaSaLANDのエッセンスを学校内に取り入れたいと話していたことから一番重要な点は既存の学校が「本当に子どもたちの居場所となりえているか」を再確認する意識改革だと思う。枠にとらわれず自分がありのままでいられる空間があり、教育上メリハリの効いた学校であればそこを居場所とする児童生徒も増えるのではないか。

金沢駅前。欧米のツアー観光客でごった返しておりました。皆さん兼六園に行かれるのでしょうか、、、

長野冬季オリンピックの時は、テレビにかじりついてスキージャンプを見ていました。

宇都宮市の課題も見えた有意義な視察となりました。快く受け入れてくださった金沢市、長野市職員の皆様に感謝申し上げます。

宇都宮市議会議員|茂木ゆかり後援会

ご覧いただきありがとうございます。宇都宮市議会議員|茂木ゆかりと、後援会活動をちょぼちょぼアップしていきます。 普段は真面目、時に泣きあり笑いあり。どうぞお付き合いください。

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